III. The First Lesson〜高速ギター殺人者の凱旋!〜

 今日(8月17日日曜日)は登録して学生証を作っておしまいです。大学の講堂みたいなホールがあって、そこで寮のお金を払い、最終登録が終ると、2階に行って学生証に使う写真の撮影。デジタルカメラがマックにつないであって、撮った写真がそのまま取り込まれ、数分でIDカード(学生証)が出来上がりです。(要するにプリクラみたいなもんか。)これはすごい!顔、多少修正して学生証つくれんじゃん!あこがれの小顔もデジカメならばっちり!(なわけねーだろ。)久しぶりに持つ自分の学生証にちょっとにやけながら、「今日はきっと最初で最後の観光のチャンスだ。歩こう。」

 天気は超快晴!ボストンの空は高いぞー!とりあえず寮の前の道をずーっとまっすぐ行くとそこはボストンと、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学のあるケンブリッジ(ちなみにハーバードとMITが両方ともボストンにあるって知らなかった。)とを隔てるチャールズ川。でかい。街の中にこんなに大きな川があるなんて、いいねぇ。川好きのボクは非常に感動。気持ちいー。^^

 ボストンの人は、(特にこんな晴れの日にはそうなんだろうけど)走っています。基本的に。^^朝、昼、晩、関係なく走っています。さすがはボストンマラソンの街。老若男女関わりなく走っています。ヘッドホンしながら走る人。ドリンク飲みながら走る人。ローラーブレードやってる人も多かった。気持ちよさそー。

 見るもの全てが初めての経験って、実はそんなにないよなぁって、ずっと思ってた。初めて東京に来たときも、確かにこんなイカれた大都会は初めてだったし、ラッシュにもびっくりしたけど、「全てがはじめて。」っていう感じじゃなかった。でもボストンを歩くと、ほんっとうに全てのものが初めて。街を歩く人、街角のニューズペーパーボックス(っていうのか?新聞を売ってる箱。)舗道も、道路標識も、横断歩道も、当たり前だけどみんなはじめて見るものばかり。そうか。ここは日本じゃないんだ。

 金がなかったってのもあるけど移動に使う交通手段は地下鉄だけ。せっかく晴れてるんだからとにかく歩き回ろうと思って。だから夕方部屋に帰ってくる頃はもうくたくた。晩飯を食ったらもう即死。(+_+;)グレッグとは殆どしゃべらないうちにベッドへ

 …………、あんまり早く起きたから夜中の3時には目が覚めてしまった。^^ゞ夜中にごそごそ動き回り、寮を探検。ジュースの自動販売機や洗濯機、後は電話、練習室くらいしかない。そういや昼間、道を歩いてるときには自動販売機はなかったなぁ。そうこうするうちに夜明けだ。

 ―しかしこの深夜行動。毎日続いたんだけど、これが「時差ぼけ」だとは、日本に帰ってくるまで気が付かなかった。日本じゃいつも時差ぼけみたいな生活してたからねぇ。(^_^;

 8月18日、月曜の朝!やっとレッスンの始まりです。朝9時に各生徒にそれぞれのタイムスケジュールが渡され、10時から各教室に別れて4日間にわたるレッスンがいよいよ始まりまーす。^^

 さて、レッスンの前に、全体的なことを書いときましょう。このプログラム(Berklee Summer Guitar Session)はバークリーに興味を持っているギタリスト達が、5日間でその様子をかいつまんで見てみるといった趣旨のもので、いわばお試し体験コースみたいなもんです。カリキュラムは“Style”(下記参照)“Fretboard Harmony”(要するに『理論』)“Ensemble”(バンド)という3種類の授業を4日間受け、最終日の5日目にEnsembleの発表(つまりライブ)をするというものです。その辺はなんだかどっかのバンドサークルの合宿みたいなんですが。^^;

 最初の授業はStyle。申し込みの段階で、“Jazz”“Fusion”“Classical Rock”“Contemporary Rock”など自分のやりたいを申請するのですが、それに応じてこのクラスが決められます。一応“Classical Rock”のコースを選択しておいたので、どんな先生が来るか楽しみでもあり、不安でもありました。先生の名前はJoe。教室はちょっと広めのスタジオで(20畳くらいかなぁ。「畳」で言うな「畳」で。^^;)、機材とかなんかいろんな物がごちゃごちゃおいてある。集まった人は間違いなく高校生が中心。来年あたりバークリーに来ようと思っている目がギラギラしてるガキどもばっかり。持ってるギターはアイバニーズやESP(!)などのメタルギターが中心。や、やべー。このクラス、メタルだ。・_+;;

 そうこうするうちにジョー先生登場。ジミヘンのTシャツ着てる。ほっ。よかった。ジミヘンだ。(なんでジミヘンだと安心するのかわかんないけど。生徒達はパンテラとか着てたから。)出席をとったあと、じゃぁはじめるぜといって取り出したギターがESP!しかもフロイドローズつき。そ、そうか。ESP使ってるけど、でもジミヘンが好きな人なんだな…。(^^;

最初のスケール練習で不安は頂点に。

「音、随分歪んでるなぁー。

弾いてないときもサーって音するぞ…。

しかも、………ちょっと速め、かもしれない……。」

 次に「俺のオリジナルを聴かせるぜ!」と言って取り出したCDにあわせて、ついに弾きはじめた!(言い忘れたけど、俺はこの授業で、人数が多かったせいもあってジョー先生の目の前、彼のギターの指盤1メートル前に座っていました。)

 (・。・)(めがてん) …………マジ。 う゛げ。はえぇ。

 ってゆーか…、ちょっとこれは苦手かもしんない…。

 「ダギューン!テロレロテロレロテロレロ!」

 バークリーって、こういうとこだったのか。しまったぁ。これから一週間これやって過ごすのかぁ。うっそー。「悪夢。」日本帰ろっかなー。帰れねー。トホホ。(T_T;

でも周りのメタルキッズ達はもう大興奮!

“Wow!”

 そっかー。「ワーウ」ってこういうとき使うのかぁ。はじめて聞く生“Wow!”こんなとこで聞くとはね。トホホ。

 要するに一言で言えば、高速様式美ヘビメタ、ですね。これはもう2〜3秒聴いただけで後頭部に鋭い痛みが走る。しかも目の前。それから1時間半、延々その様式美超高速速弾きのオンパレード。ふぇーん。死ぬ。(;_; 何なんだー。俺の人生。

 ようやく終ったその授業。ジョー先生は授業終了後も、超壮絶テクを続けながらにこやかに生徒を送り出してくれました。

“Good bye! See you tomorrow!”「ギューン。デュロロロロロロロロ…。」

 誰が来るか!クラス替えてやる!なぁーんてことを思いながら、1日目の1時間目が終りました。でももし替えられなかったら明日からどうしよ。朝はボストン観光だな。もったいないけど地獄の速弾きをあと3日間も聴かされるよりはマシだ。

 でもね。その先生、実は日本では結構有名な先生。というか「売れてるギタリスト」だったの。サマーセッションに来てた日本人(From 大阪)の人にあとから聞いたんだけど、「ジョー・スタンプ」(Joe Stump)といってヤングギターなんかにも記事を書いている有名な先生。しかも「イングヴェイの後継者No1」といわれている人らしい。言われてみれば確かに(言われなくても)ほんとにイングヴェイそのものだったなぁ。

 さらにさらに、日本に帰ってきてびっくり、とあるCD屋さんの売り上げチャートでは、彼のCDが何と9位(!!!)ギターマガジンにも記事が載ってた。ちなみにさっきのヤングギターの「記事」っていうのは彼が書いたギター講座。こっちはアーティスト、ジョー・スタンプに対するインタビュー。インタビューですよ。そんなに有名な人だったんだぁ。しまったぁ。サインぐらいもらっとけばよかったぁ。日本で売れば高い値がつくかもしれなかったなぁ。^^;普通のCD屋で彼のCDは売ってるはずです。すごいよ。マジで。

 てなわけで今日はここまで。なんかちっとも進まないけど、まぁ急ぐこともないでしょう。でもいつ終るんでしょうか?次回はここ数年来患っている肩、手首の痛みに、光を与えてくれる(であろう)先生との感動の出会い(そんなに大袈裟なもんでもないが^^)から始まります。

じゃぁね。

つづく