IV―運命の出会い―
 満面の笑みでにこにこ笑いながら超絶テクを繰り広げるスタンプ先生に愛想笑いで(永遠の-_-)別れを告げたあと、多分日本では一生経験しないだろうという事件に遭遇しました。バークリーの建物はものすごく古いくせになぜかエレベーターがついてて、最初は「なんかアンティークって感じで風情があるなぁ。」と思っていたんだけど、乗ったと思ったら次の瞬間止まった。(・_・!!!!)うっそー!ちょっと待った!映画だとこのあと何十時間も助けが来なくって中の人ケンカとかはじめちゃうんだぜ。しかも10人近く乗ってる中で日本人俺だけ。これはヤバいと思って非常ベルを押したら。後ろにいたパンテラ小僧がへらへら笑いながら「やめとけよ。べつに火事ってわけでもねえんだし。^^」…っていうかこれ火事と同じぐらい一大事だと思うんだけど…。しかも非常ベル鳴んない。マジかいおい。しばらく生きた心地がしなかった。…でもなんとか次の階に着いた。普通はここでみんなあせって降りると思うんだけど、降りたのは俺だけでした。なんでだ?アメリカじゃ普通にある事なのかなぁ。

 2時間目は理論。まさか今度も速弾きじゃないだろうな。でもそういうの好きな人多そうだし…。メタルの理論てどんなんだろう?

 エレベーター事件のおかげでちょっと遅れて教室に入っていくと、出迎えてくれたのは初老のジジい。こいつはメタルじゃないだろうなきっと。

“Hello, my name is Charles Chapman. Call me Charlie.”

写真載せました。本物はこんなにかっこつけてないです(笑)。》

 じじい相手に「チャーリー!」ってか。なんかアメリカっぽいけど。名前昔のコメディアンに似てるな。あれはチャールズ・チャップリンだっけ。あとジョン・レノン暗殺したやつ。それはマーク・チャップマン。^^間違えて「マーク」って呼んじゃいそうだな。でもジジいだからゆっくり話してくれるぶん少しは話がわかりやすそうだ。さっきのジョーは殆ど何言ってんのか分からなかったからな。唯一わかったのは超絶速弾きをひとしきり終えたあとの

“That kind of thing.”(「まぁ、こんなもんだよ。」)

こんなもんってどんなもんだ!(^_^ゞ

しかし。チャーリー先生、発音は分かりやすかったけど、ここは理論の授業だった!単語がわからないー!T_T;

「Cazの住んでる日本じゃ、12歳になったらみんな教科書持ってイングリッシュの勉強するんだぜ!」

わかってんじゃねーかミスターチャーリー。

だったらもう少しわかりやすい言葉でしゃべってくれよぉ…。

だめだ。ほとんど聴き取れねぇ。

お、当てられたぞ。答えろってか。

“How many sharps does Gmajor have?”

「へ?」

動揺のあまりほとんど聴き取れなかった。(;_;ゞ

かろうじて耳に入ったのはsharpとGmajorぐらい。

もうこんな時には“Pardon?”ていう言葉さえも浮かばないね。

シャープ?シャープってとがってるってことだろ?何がとがってるって????あ、まだなんか言ってる、黒板見ろってか。ちなみにその教室はかなりこじんまりしてて、生徒も7〜8人。大学のゼミを思わせる雰囲気の部屋の黒板にはなんかいろんな記号が書いてる。一応さっき写したんだけど…。

 あ、そうか、シャープって「#」じゃん!黒板にはそれが書いてあるんだ。あーそっかそっか。(これは多分彼の考えたものなんだろうけど、シャープとフラットの早見表(?)みたいなもの、シャープがいくつつくとキーはどうなるとかいうのが一目でわかるようになってる。)

「はーい。ひとつでーす。」

あーよかったー。^^

言ってることが半分くらいしかわからないまま、授業は進みます。

 「ギター弾くってのは思ったよりも重労働なんだぜ。スティーブ・ヴァイが1日18時間練習したっていうけど、ただ弾きまくってたわけじゃない。しっかりとしたウォーミングアップがあったのさ。じゃぁ俺が考えたウォーミングアップをやってみるぜ。」

 クロマチックのウォーミングアップ(「でとととでととと」ってあがってくやつね。)とかいろいろあった。総じてこういう物は楽しいもんではないですな。その途中でチャールズ先生が俺んとこへやってきた。

“Caz, don't do that!”

なんだいジジい。手がどうかしたか???

あ!(気がついた。)

そうか。やっぱこれ手によくなかったんだ。日本で通ってたギタースクールではむしろ「これができないとだめだ。」って言われたのに。

 「これ」っていうのは左手で指盤を押さえるときに手首をネックよりも前に出すこと。こうすると指が自由に使えて押さえやすいしいろんなことができるようになるんだ。でも、俺の行ってたギタースクールでこれを薦められていっしょけんめい練習して、できるようになったかなと思った頃に腱鞘炎の症状が出てきた。やっぱりこれよくなかったんだ。そっかぁー。

授業が終ったあとで聞いてみた。

「ギター弾くとすぐ手首とか腕が痛くなっちゃうんです。なんかいい手はありますか?」

 「さっきも言ったけど君はフォームに問題がある。まずそれを直すこと。ギターを弾くときには必ずウォーミングアップをすること。(といってプリントをくれた。なんかのギター雑誌に彼が連載しているものらしい。)それからこれが一番大事なこと。痛くなったらすぐやめる!合い言葉は“No pain, no gain. That's nonsense.”だ。」

 大学受験用に覚えた「虎穴に入らずんば虎児を得ず。」をこんなところで聞くなんてね。そうかぁー。あー、バークリーきてちょっとよかったかも。後で聞いたんだけど、彼は練習のし過ぎで弾けないようになっちゃったギタリストを今までに何人も見ているし、彼自身も何度かそういう状態になった経験があるんだって。もらったプリントには「スポーツでウォーミングアップをするのは当たり前なのに、ギター弾くときに何にもしないなんて危険すぎる!」と書いてありました。

 昼休み!まだジョーの超絶速弾きが頭から離れない。ぐえぇぇぇ。^^;2時間目は久々に頭使ったし。もう疲れちまったぜー!飯はね、食堂があるの。カフェテリアが。しかもタダ。(宿代は食事込み)ただに弱いオイラ。さらに嬉しい(というか困った)ことに3食ともバイキング形式で好きなものを好きなだけ!!嬉しすぎる!ここぞとばかりに食っちゃうんだこういうとこでは。(まるでどっかのサークルの合宿の朝飯ですね。)

3日目から吹き出物が出た。濃すぎるものばっかりなんだもん。(でも食べまくった。^^ゞ)

 午後は(バンド)だからきっと頭は使わなくてすむだろ。先生の名前はロビン・ストーン。ロビンというとキン肉マンのロビンマスクぐらいしか知らないからきっと男だろうと思っていったら何と女の人だった。そういえばロビンちゃんってのもいたっけ。

“Hi, is your name Kazuyuki?”

「はーいそうでーす。^^」

ロビン先生けっこう美人^^

写真です 。最終日のライブ、楽屋で同じアンサンブルの子と。》

プリテンダーズのクリッシー・ハインドみたいだ。

美人ギタリストなんてかっくいー。

 その授業の目標は最終日にライブをやること。ギターが生徒5人プラス先生と、ドラム、ベース(バークリー卒のプロの人)でコピーをやる。今回の俺の目的のひとつはこれだ。プロのリズム体とセッション。でも今日はリズム体はまだお預け。なんかつまんなそうだなー。でも先生が美人だからそれだけでもいいか。授業が終ったあと話し掛けてみよっと、この人もやっぱり半分くらいしか話わかんないけど。

 そしたらロビン先生、何と日本に半年も住んでたらしい!(その割には「オハヨーゴザイマース。」「ナンデスカー。」ぐらいしか日本語覚えてなかったみたいだけど。)琴を習ってたんだそうな。

 「世田谷に住んでいたの。渋谷や原宿には自転車でよく行ったわ。」

 「そうですかー。奇遇ですねー。」

とはいわなかったけどね、おれは。^^;

でも日本のことちょっとでも知ってる先生がいてよかった。^^

 その後彼女との燃えるようなラブロマンスがあるとは、

この時は予想もしないボクであった…。





























なかったんだけどさ。

ごめんね無駄にスペース使って。はい次。

 授業が終ったらとりあえず歩こう。突然決まった渡米だからほとんど観光の計画も立ててこなかったけど、せめて大西洋は1度くらい見とこう。あとボストンって言えば「ボストン茶会事件」だ。そんときの船があるらしいからそれも見とこっと。

 そんなんで2日目くらいまでは授業の後晩飯まで、ずっと歩きました。大西洋(って言っても港しか見れなかったけど。)はなんかヨーロピアンな感じ。かもめも英語で話すのかな?港にいた黒人の女の子(推定年齢6歳)がかわいかったなぁ。変な意味(どんな意味だ!)じゃなくってさ。ラジカセ持って踊っちゃったりするんだけど、そのしぐさがまたかわいーんだ。「結婚するなら黒人かぁ。」とまで思っちゃった。

 「アメリカ独立のきっかけとなった場所」というのがあって、それが「ボストン茶会事件船」でした。高校の文化祭でその船を作ったんだけど、その時のこと思い出しちゃいました。「あの頃はもてたよなー。」とか。^^船は意外とちっちゃかった。

 ほかにもあちこち行ったけど、ボストン美術館とか、有名なとこはほとんど行かなかったなぁ。だってそこら辺歩いてるだけでも、日本人の俺には十分珍しいものばっかりなんだもん。あとね、歩いてて思ったのは、「アメリカ人の生活には音楽が根づいてる。」ってこと。さっきの黒人の女の子もそうだし、車に乗ってる人も、店で仕事してる人も、家の前でひなたぼっこしてるじぃさんだって、必ず音楽かけてる。しかも日本と決定的に違うことは、そのほとんどがヒットチャートの曲じゃないってこと。だから行く先々で違う曲がかかってて新鮮だったし、知ってる曲は1曲もなかった。いや、1曲だけあった。

 3日目くらいだったかなぁ。日本の家族やじいさんばあさんにエアメールでもだそうと郵便局に行ったときのこと、アメリカに行ってはじめて街なかで自分の知ってる曲を聴いてちょっと嬉しかった。でも今のヒット曲じゃないよ。26年も前の全米No.1ヒット。Honey Coneの“Want-ads”借りっぱなしになってるCDの中に入ってた曲です。日本の郵便局じゃちょっと考えられない光景だったね。黒人のおばさん(またウーピーゴールドバーグに見えた。)が仕事しながら歌って踊りまくってるんだから。「はーい、お次はあんたの番ね。ドゥルルルルー♪」おばちゃんいい声してんねー。

さーてと。今日はこの辺で終り。^^

 ここまであんまりだらだら書きすぎたからちょっと反省して、なるべく面白いのだけをまとめて書こうと思ったんだけど、書き始めたらあれもこれも思い出しちゃって…。

次はもっとまとめて書くね。

それではこれに懲りずに、次回もよろしくね。

つづく